日常の疑問 解決します


「やあみなさん! 僕はこの小説の司会進行をします! 工衛(くえい)です!」

「えー、同じく司会進行を押し付けられました。夢瑠(むる)です。」

お二人さん、小説の中のキャラが「この小説の」とか言っちゃ駄目だよ。

「いーじゃん! どうせ中人が書いてるだけなんだから!」

それもっと言うなよ。

「もういいよ。俺なんか来たくもないのに無理矢理……」

「そんなつれないこと言うなよぅ!」



えー、紹介が遅れたんで物語の筋を。
さっき出てきた二人が日常の疑問をあれこれ考えて解いていく、みたいな?

「みたいな、じゃなくて解いていくん、だー!」

「ナレーターもう出てくるな。誰に説明してんだよ」

そりゃあ読者様に決まってるだろう。

「そーゆーこといっちゃ駄目なのー! 僕達は、何事もなくこの世界で生きてるってことになってるんだから!」

「自分もど頭でそんな事言ってたくせに……」

お前もな。大分不毛になってきたからさっさと話し進めろよ。リクエストしてくれたイルカさんに失礼だろ。

「リクエストとか、他所様の名前を使ったりするなぁぁ!」



「いやー、色々ごたごたしててすみません! さっそく最初の質問に行きましょう!」

「質問……? 何処から質問なんか来てるんだ?」

「世の中には知らなくていいことなんて今まで食べたパンの数より多くあるんだよ。」

「まーいいや。じゃあここに何故かある質問に答えていこうか」

「オッケー! じゃあさっそく読んで!」

「俺が読むのか。……えー、『今年の三月一日は何曜日ですか?』
 ……何だこれ」

「よーし! 絶対に解明して見せるからね!」

「いや、そんなのカレンダー見れば……」

「これでどう!? S&Bカレーよう」


ごっ
何処から取り出したのか夢瑠の手には百科事典が。


「真面目にやれ? な?」

「ご、ごめん……だから角はやめて……角は……
 えーっと、今年の三月一日は水曜日かな。これで満足?」

「誰に聞いてんだ」

「じゃあ気を取り直して次の質問いってみよう!」

「質問に答えろよ」

「だからこれから答えるんじゃんか」

「まず俺の質問に答えろっつったんだよ」

「いいからいいから。次いくよ! えー、『虹は何で雨上がりにかかるんですか?』
 うわぁ、いきなり普通の質問。夢瑠君、なんで?」

「ちったぁ自分で考えろよ。それでも司会か?
 これはアレだな。シャワーとか霧吹きとかすると小さな虹が出るだろ?
 アレと同じで雨が降ると空気中に水蒸気が溜まって、空が霧と同じような状態になって虹がかかるんだ」

「へー。何でそうなると虹がかかるの?」

「さあ」

「それじゃ駄目じゃんか! ビミョーにすっきりしないよ! 何とか答えてみようよ」

「科学者でもないのにこんな質問考え付いた作者が悪いんだよ」

「作者とか考え付いたとか言うなぁ! 光が浮かんでる水滴の中で屈折してそう見えるとか、もっともらしい事言ったらいいじゃんか!」

「知ってんじゃねぇか。どっかで調べてきたのか?」

「調べるって、何処でさ。この話、ほとんど即席なん……」



本日二度目の百科事典。


「それなりに考えてんだろーがよぉ」



三十秒後
血まみれで土下座している工衛がそこにいた。

「妙なこと言ってすみませんでした……」

「もう次いくぞ。……『流れ星に三回願い事すると叶うって本当?』
 あー、これな。さすがにそんな人を見たこともないし、本当かどうかなんてわかんねーんだけどな」

「信じてたらきっと叶うよぉ!」

「そういうのは人次第なんじゃないのか?」

「叶うったら叶う! 叶うんだぁぁ……」

土下座のままうずくまった工衛は今にも「バスケがしたいです……」とでも言いそうだ。

「夢瑠先生……バスケが……バスケがしたいです……!」

あ、ホントに言いやがったよコイツ。

「訳の分からんこと言ってんじゃねぇよ。じゃあ色々補足だ。
 そもそも流れ星ってのは相当に速いスピードで消えちまうから願いを三回言うなんてのは不可能に近いんだ。
 もしかしたらその速さから、『もし流れ星が消えるまでに願いを三回言うことができたら願いが叶う』
 なんて昔の人が考えたのかもな」

「うーん、夢のある話だねぇ。で、流れ星の速さってどれくらいなの?」

「島村ジョーより速いぐらい」

「わかりにくっ! もっとこう、わかりやすい例えないの?
 エイトマン以上とか、不知火 守のストレート以上とか!」

「それもわかる人限られて来るだろ。前者なんか相当懐かしいぞ。
 作者の年ばれるんじゃねぇか?」

「だから作者とか言うなぁ!」

「うるさいな。じゃあ感覚で言えばいいんだろ。
 一回瞬きしたらもう消えてるぐらいだ」

「最初からそう言ってよ。でもそんなに速かったら三回も願いを言うのは難しいねー」

「言えるのは承太郎とDIOぐらいだな」

「ドラえもんもいけるんじゃない?」

「余計な事を言うな」


「じゃあ最後の質問いくよー!」

「三個目にしてもうネタ切れか」

「違うよ、パターンが同じだからさすがにこれ以上やるのは苦しいんだよ」

違うわァ! 何処の一発芸人だァ! ネタ切れでもなければパターンに困ったわけでもない!
これは短編小説だから短めにまとめないと駄目なんだよ!

二人ともその疑うような目つきをやめなさい!

「今、何気に一発芸人のこと馬鹿にしてたよね……」

「あの人らだって頑張ってたのになぁ……」

あ、ごめんなさい。すみませんでした。
……とにかくネタ切れじゃないからな! それだけだ!

「ナレーターが登場人物に話しかけるのって、無しだよねぇ」

「何を今更。最初っからやってたじゃねぇか」

「それもそうだね。じゃあ質問! なになに、『赤ちゃんはどうやってできるの?』
 ……」

「腹いせにこんな質問よこしやがった……」

「これは、答えるのに困るよねぇ……」

「定番なら、コウノトリが運んでくるとかそんな逃れ方があるんだが……」

「コウノトリも絶滅危惧種だもんねぇ。
 人の子ども運ぶ暇あったら自分の子どもどんどん作れって言われるよ」

「それにこんな答え方じゃ納得してもらえんだろう」

「じゃあ、隠さずにありのまま!」

「全年齢対象のサイトでありのまま言っちゃまずいだろ。やんわりと言えばいいんだよ」

「わかったよ! 恥ずかしいセリフ禁止だね!」

「そういうことを言うなっつってんだよ」

「えーっとねぇ……。卵ってあるでしょ? 鳥とかの赤ちゃんはその中ですくすくと育って、
 ちょうどいい大きさになったら殻を破って外に出るんだ。
 人間の赤ちゃんも同じで、ただ卵の殻がお母さんのお腹になってるだけなんだよ!
 こんな感じでどう?」

「お前にしては考えたな。これなら特に問題ないだろう」

「でしょ! これからは子どもに聞かれたらこう答えたら良いんだよ!」

「別に良いとは思うがな。ただ……」

「ただ?」

「卵の殻が母親だってんなら赤ん坊は母親の腹を突き破って出てくるってことになるよな」

「きゃあー! そんな『HUNTER×HUNTER』みたいな出産はいやー!」

工衛は絶叫した。


「じゃあ、ここらへんでお開きってことで」

「そうだね。じゃあ皆さんさよーならー!」
 また来週ー!」


この小説、リクエストだからこれっきりだけど?

「え?」















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